[決行]

私、去年の9月ごろからyahoo!のチャットルームを利用して
【怪談部屋】を作ってホストしてたんです。
そこで5人ほど常連ができてお互いに体験した話や
創作なんかを話し合ってたんですが、
怪談って見たらやっぱり好奇心旺盛な新参者もしょっちゅう入ってくるし、そういう人たちは聞きたいだけ、荒らしたいだけってのが多かったんです。
で、
ホストとしては「常連5人に語り手皆無になるときもある…。
こりゃすぐにネタが尽きてしまう」と思って創作解禁したんですが、
やはり「実話じゃないの?ちぇー」みたいな勝手な人もいるわけで
チャットのあり方に悩んでました。

ここ2ちゃんねるのように不特定多数で、
本当に大勢の人が見てるなら必ず誰かが喋ってくれるでしょうけど、
入室者が常に1桁台の部屋でしたのでやはり公平に「聞き逃げはナシ」がいいと思って、
入ってきた人には「申し訳ないけど、あなたもなにか喋ってね?」と言ってました。

開いてから5日目あたり、
いつもの常連メンバーと新参2人の7人で都市伝説の話とかしてたんです。
そこに「今すぐ話したい」と珍しく積極的な新参者が1人入ってきました。
みんな彼の出現に大歓迎。(言葉使いも丁寧だったし)
自分から「話したい」と言ってた割には一番最初に言うのは躊躇ってて(新参ってのを気にしてたのかもしれない)、
私たちの持ち寄った恐い話を最初に聞いて、
どのレベルの恐い話がOKなのか考えていたようでしたが、
最後に話し始めてくれました。

「僕は恐い話とかオカルト関係のサイトに興味があって、
ここ半年くらい主に自殺サイトを見て回ってました。
自殺しようとする人たちって、チャットでどんなやり取りしてるんだろう…て。
『日本海溝』(だっけ?)とかで探せばすぐにその手のサイトは出てきて、
らくらくHPにもぐりこんでチャットの会話や管理人の写真や常連組とのメールのやり取りなんかをしてたんだ。
いかにも「人生に疲れた、死にたい」みたいな様子に語ってさ。

(実際は彼らとのチャットの内容に半ば引いたり、呆れたりしてたらしい)

…で、ある日、掲示板に

        『ついに決行する時が来ました』

みたいな書き込みがあったんだ。
いや、書き込みだけなら他の人間も一杯書いてる。
でも、その書き込みはHPの管理人によるものだった。
その管理人とは1回オフ会で会ったし、
常連さん5,6人ともその時顔見知りにはなったんだよ。
だから各自メールアドレスとか知ってたし、
チャットでもよく話すようになってたんだけど…。

『来るべき時が来た!』と思ってる半面、
どこかで『マジかよ…?』って実感っての? 想像できなかった。
だって、ちょっとでも知り合いになっちゃってるし。
ネットではほぼ毎日会話してるわけだし…

で、その書き込み、僕はスルーしました。
元々自殺する気なんかなかったし、まさか…って気持ちもあったから。
でもね、個人メールが来たんだ。

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決行日:○月×日、
集合場所:▲▲県■■市××駅▲口前、
方法:練炭自殺、
現在の参加人数:…人  (…etc)


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ってね。
誰が何を持ってきて、
誰がレンタカーを手配するってのも事細かに書いてあったんだよ。

でも、僕は行かなかった。
一回会ったときになんとなく宗教臭さがあったからさ。
参加者はHP管理人は女性(キレイめな人だったらしい)、
気の弱そうな男性が一人いる以外は、みんな女性だった。
だからその男性は女に人たちに丸め込まれたのかも…って思ってたよ。
僕に会った時、管理人さんが誘うように何度も耳元でささやいたりしてたしさ。

とにかく、書き込みもメールも無視してた。

でも、それから少しして夕方のニュースで
『男女6人山奥で練炭自殺』事件が報道されてびびった。

君らも知ってるでしょ?
あの、山奥でレンタカー借りて集団自殺したやつ…

夕飯時だったんだけど、急いでパソコンつけてメールの確認したよ。
メールの内容と同じだった。

夕飯時だったんだけど、急いでパソコンつけてメールの確認したよ。
メールの内容と同じだった。

今までチャットしてた人物がいきなりこの世にいなくなったって事実…

     けっこー重かった。

6人ってほぼ常連メンバーだったから。男女比もさ。

でも、常連メンバーにはあと2人いたんだ。
俺と、もう一人、男がさ。

続く