[シンプルな怪談]

友人から聞いた怖い話。

テスト前、彼はラジオの深夜放送を聴きながら勉強をしていたそうです。
と、突然ラジオに雑音が入り始めました。
 ザ……で…のリスナー……ザザ……さんから……ザザ…
そうこうしているうちに、完全にノイズの音しか聞こえなくなってしまいました。
ん? どうしたんだ、おっかしーなあ。
と思ってラジオのアンテナの向きを変えたりツマミを回したりしていましたが、
ちっとも元に戻る気配はありません。
「何なんだろ…」
ラジオは諦めて、勉強に戻ろうとしたそのときでした。
 パシャ…

窓の外から水の音が聞こえたのだそうです。
そして、


 …たすけ……てー…………ぇぇ…


窓の外からか細い声が響いてきました。小さな女の子の声が。
ぞわっと背筋が震えたそうです。
こんな真夜中に女の子の声……ありえません。
当時の彼の家族は父親の実家に、祖父母と同居していたのだそうです。
その家はかなり広い池がすぐそばにありました。
そして彼の窓からはその池が見渡せるのです。
声がそこから聞こえてきたのだとしたら……。

朝起きてから彼は恐る恐る昨晩のことを祖母に尋ねたのだそうです。
すると、案の定こんな答えが帰ってきました。

「ずっと前にね、あそこで女の子が溺れて死んだんだよ」

その後は特に何か怖い目にあうようなこともなかったそうです。
ただテスト前の深夜勉強だけは避けられなかったそうですが。(そりゃそうだよね)
仕事の都合で彼と両親は中学まででその父親の実家を離れたのだそうですが…
何もなくて、よかったね。

シンプルで起承転結も落ちもはっきりしていますが、
実際に自分の身にこんなことが起きたらやっぱり嫌です…。


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