[ポエム]

妙々骨肉伝奇

禍々しい骸骨にも似た―――否、
是は最早 骸骨其の物で有る。
其の落ち窪んだ 眼球を滑らせて、
ワタシを睨む お前は誰だ。

鏡面世界、即ち未知の世界と云う物は、
多々取り上げられる題材で有る。
然し、其処は誰も見る事の出来ない、
何時までも 幻想泡中で眠る儘の存在だ。

扨、此処は檻でも常闇でも無い、
至極、普通の場所で在った筈で有る。
何故、此処で懼ろしさが込み上げては、
胃液と共に口腔に溜まるのだ。

彼の様な骸と目を合わせ―――否、
縫い付けられて、の方が正しいか。
今は前進も、後退も出来なくなって、
唯唯 荒い呼吸をするばかり。

彼の名高い 相馬の古内裏が脳裏を過る。

狂えば狂う程 良く冴える脳髄で、
もう一度、鏡の中の骸を検証しよう。
此の落ち窪んだ 眼球を滑らせて、
恐々恐々、奴を睨んで見た。

あゞ 是はワタシだ、
ワタシ 自身なのだ。

詰まり、鏡の中が本物、と云う事―――、
ワタシの体肉は、偽物、と云う事―――、
骨が本物で、肉は偽物。

漸く、果てに辿り着いた。
さ、消えるとしよう。


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