[お札の家]
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今考えるとあのバリケードを越えた瞬間、急に寒くなった気もするし、そんなコトは無かった様な気もする。
とにかく空気が変わった、ってコトは自分にもわかった。
緊張してしまい、無言で歩く自分。裏腹にSはやたらキョロキョロし
「あっソコにおるなー。おぉ!アッチにもおるで〜。」相変わらずのハシャギ様だった。

所でお札の家にはダミーがある、というコトを前々から聞いていた。

学校の友人「あんなー、林道を進むとまず一件の白い家にぶつかるんじゃ。でもその家は放置されたホンマに普通の民家じゃけ、
その家の横に登坂になった獣道があるけぇソコを登らんとお札の家には辿り着けんよ?タマにその普通の民家をお札の家と勘違いしてそのまま帰ってくるヤツとかおるけぇのーw」

そしてそのダミーの家は本当にあった。Sにダミーの家の話はしてあったので、二人とも落ち着いて家の横の獣道を目指した。

そこでSが
「ちょぉ待って、煙草に火ィ着けるけぇ」と立ち止まった。
なかなか火が着かない。
ボーッと白い家を眺めていた自分は
「ココも中々雰囲気あるなぁ」と白い家に近づいた。

なぜかその普通の民家も周りをチェーンで仕切られていた。
特に何も感じずチェーンをくぐろうとすると

「Mっ!!(自分の名前)」

Sに呼び止められた。
驚いて振り向くとSが煙草をくわえたまま目を見開いてコッチを見ている。
何事かワケが分からず動けないでいた自分だが、Sの視線が自分では無く、自分の背後に向けられいる、と気づいた時全身に鳥肌が立った。
背筋が凍るように冷たくなったのは生まれて初めてのコトだった。

すぐにSに向かって走り出したいがどうにも足が動かない。完全にパニックになっていた。
それを察してかは知らないが、突然Sが

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

と馬鹿デカい雄叫びを上げ、もと来た道へ走りだした。その大声に助けられ、自分も我に帰って全力で駆け出した。林道がやけに長く感じ、絶望的な恐怖感があったが
「後ろを振り返ってはいけない、ってまさに今のこういう状況のコトを言うのだろうな」という考えが頭をよぎったのを覚えている。

ようやく林道を抜け一般道に飛び出し、凄い勢いで車に乗り込んだ。

車に乗り込むとただならぬ様子を察知した先輩が聞いてきた
先輩「どうしたんなお前ら!?何があった!!」
自分はガタガタ震えが止まらず、まともに答えるコトができず、
「とにかく早く車出してください…お願いします…すんません…お願いします…」その場所から離れたい一心でそれしか言えなかった。
怯え方が尋常ではなかったので、先輩もからかったりせず車を急発信させた。
しばらく無言のドライブが続き、先輩の彼女のすすり泣く声が聞こえるだけだった。

不意に背中を強くバン!バン!と叩かれた。驚いて横を見ると、満面の笑みを浮かべたSの顔があった。

S「楽しんでもらえた?w」
その一言で全てを理解した。

正直Sを殴り倒したかったが、怒り以上に安堵感、解放感が溢れてきて一気に体中の力が抜けた。
先輩も状況を飲み込んだらしく「S、お前なぁ〜」とミラー越しにSを睨みつけていた。

コイツは最悪だ、コイツとだけは二度と心霊スポットには近付かない。
あーでも、良かった〜…

先輩も同じ気持ちだったのだろう、普段怒りッポイ性格だがSを責めるコトはあまりせず、彼女をなぐさめていた。

続く