[最近のガキは木をみろ]

「ボールあった!」

Aがやっと見付かったと安堵の表情をしながら、僕に呟いた。僕も、やっと帰れると安堵の表情をAと同じように見せた。
するとAが、

「おい、あれ誰だよ」

Aの言葉に桜の木の下を見ると、
年は40代前半くらいのスーツを来たサラリーマンが、
桜の木を見上げながらブツブツ呟いています。
俺は気持悪かったのでAにボールを取りに行かせた。
すると、Aが足早に戻って来ました。
Aは頭を傾げながら、何か考えたような表情をしている。
俺が、
「あのオッサン何て言ってたの?」
と聞くと、
「うーん。良く聞こえなかったんだけど、
『最近のガキは、木を見ねえ。一体どんな教育受けてんだ。
最近のガキは最近のガキは木を見ろ』
ってさ、ずっと同じこと呟いてんだよな。
俺の事何かまるで気付いてねぇの」
と、不思議そうに話した。
俺は、
「まぁ、只の変質者だろ?帰るべ」
とその日はそのまま家に帰った。

俺はそのまま3年になり、部活も卒業した。

学校が運動場の整備の為に、運動場内にある桜の木を切るという。他にも、運動場全部を掘り返す結構大変な工事だった。
俺は授業中何気無く工事をしている所を見ていると、
一台のパトカーが入ってくるのが見えた。
全校生徒が大騒ぎで、授業にならなかった程。

その日のHRの時間に、先生から今日のパトカーについて話をしてくれた、
「今日のあれ。うん。パトカー騒動だけどな、運動場にある桜の木みんな知ってるか?
あれをユンボでホジくり返したら、
出てきたらしい。
人間の骨が。
詳しい事はまだ分からんが、
多分殺人だろ。」


俺とAはその瞬間、
一年の頃を思いだし、二人同時に目を合わせた。

お互い、その時の事について口には出さなかった。
口に出してはいけないような気がした。

俺はその日何事も無かったかのように、
Aとは別の友達と帰った。
なるべく桜の木を見ないように。


次の話

Part143menu
top