[誰でも]

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俺は酒の勢いもあり、まったく意味がわからないので
ちょっとキレ気味に京介さんに言った。
「じゃあなんなんすか!」
普段なら恐ろしくてこんな口調で言えない所。
呑まれている。
それを聞いてますます京介さんはニコニコしながら
「違う。逆だ。」
と言う。
逆?
心霊スポットに行くと普通は不思議な体験をしないものなのか?
いやそんなバカな。
いつも何かしら体験してるじゃないか。



……

………

「…わ か ら ん!」

ついに俺はブチ切れてしまった。
京介さんは大爆笑している。
しばらく笑って京介さんは
「すまんすまん、これじゃああいつと変わらないな。」
と言い
「お前、心霊写真とかたくさん見ているだろう。」
と続けた。
見ている。
師匠に散々見せられた。
嫌な思い出もある。
それと人の集まりと何の関係があるのだろう。
なおも京介さんは続ける。
「怖い写真も沢山あっただろうな。」
こくこく俺は頷く。
「それは、初めから心霊写真だと思っているからだ、
と思った事はないか?」



ん?
初めから?

そう言えば。

そうだ。
師匠が見てる写真やネットで見る写真は初めから
心霊写真、とほぼ自分の中で思っている。
そう言われれば…そうだ。
怖い、と自分の中で思ったものや
おかしいなと思ったものは大抵オカルティックな
ものになっている。
心霊スポットだってそうだ。
鉄塔にも行ってみたがあの時は自分がおかしい
部分を感じなかった事にむしろ疑問を感じた
くらいだ。
俺はそれと人ごみについて考えてみた。



そして少しわかったような気がする。
この人、とんでもない事を俺に言おうと
してるんじゃないか、って事に。
そう思って俺は京介さんの方を見ると京介さんは
「そうだ。」
俺はこの二人には本当におもちゃ扱いされる。
「お前が疑問さえ持たなければそれはおかしな事にはならない。」

俺は京介さんにそう言われて
ちょっと目眩を覚えた。
「何かおかしいと思う事があるからそんな事を人は言うんだ
それがオカルティックな事かどうかは関係ない。」
俺はそれで悟った。
そして言った。
「それが全部人間だとは言えないって事ですね。」
それを聞いて京介さんは
「あいつは本当に性悪だったな。」
とだけ言ってその後は喋る事は無かった。
いつもの京介さんに戻っていた。
俺も何も言わなかった。
二人とも何も言わない車内で
俺は師匠のこんな言葉を思い出していた。

そこにただ在るだけだ―


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