[時報]

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夜中。Aくんは異様な雰囲気を感じて目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
Aくんは慌てて時計を見た。時計は…9時ちょうどを指していた。
A「…え?」
Aくんは目を疑った。なんと時計が止まっていたのである。
異常な不安に駆られたAくんは、急いで部屋を出て、廊下にある電話を取った。
本当はリビングにある時計を見たほうが早いんだけど、気が動転していたんだろうね。彼は時報を聞こうとしたんだ。

  「プ…プ…プ…ピーン…午後…11時57分…20秒をお伝えします…」
A(あと3分!)
Aくんは思わず身を強張らせた。12時ちょうどに何が起きるのか…時報を聞きながら、Aくんは座り込んだ。
  「午後…11時58分…ちょうどをお伝えします…」
  「午後…11時58分…30秒をお伝えします…」
12時が刻一刻と迫る中、Aくんは妙なことに気がついた。
A(この声…どこかで…)
  「午後…11時59分…ちょうどをお伝えします…」
  「午後…11時59分…30秒をお伝えします…」
A(…そうだ…あいつの声…)
そう、あいつ。誰だなんて言わなくてもわかるはずだ。
  「午後…11時59分…50秒をお伝えします…」
A(あと10秒…9…8…7…6…?今、なんか音が…)
  「プ…プ…プ…ピーン…」
時報が、12時ちょうどを告げた瞬間、Aくんの後頭部に衝撃が走った。
Aくんは、悲鳴をあげる暇もなくその場に倒れ伏した。
薄れ行く意識の中、Aくんの耳に時報が流れ込んでくる。

  「……後……時………分…1…秒を…・…え…ます…」

明朝。Aくんの両親が帰ってきた。廊下に倒れているAくんを見て、二人は急いで駆け寄ったんだそうだ。
Aくんの亡骸は、頭に包丁を突き刺された凄惨なものだった。母親は気を失い、父親も呆然と立ち尽くした。
ちょうどそのとき、外れていた受話器から…唐突に、声が流れ出したらしい。

  「…死後…6時間…13分…40秒を…お伝えします…」
  ピッ。ツーツーツー…


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