[肉般若]
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でも、友人を撒きこむわけにはいきません。私は友人を送りだし、泣く泣く一般の列へ並びました。
盗んだのは多分厨房たちです。彼女、自分のチケットを持ってるので。情けないやら悔しいやら。
そして今になって部屋のものが盗まれてないか気になりましたが、やはりオタクですね。
気分はせっかく何日も徹夜して頑張って入稿した新刊のこととか、悔しさとか・・・そんなことで一杯になってました。
それでお昼ぐらいかな、漸く中に入れて、目に入ったのはガランとした机。新刊は?と呆然とするところに
朝分かれた友人が来てくれて、ことの成り行きを説明してくれました。
なんでも押しかけの売り子たちがここで本を売って、その売上金を私に渡すと言う名目で握ったと
ころを、彼女が・・・あの香葉さんが取り返してこの友人に預けたとか。ああ、またいい人度がアップしてしまって(泣)。
でも、泣き寝入りしたくないですよ。ここで言わなくちゃと思った私が口を開く前に、
様子を伺っていたとしか思えないタイミングで彼女がやって来たんです。
手には、宅急便搬入をした私の在庫の箱を持って。
「これ、遅くなったけど出したらどうかしら」
「わあ、香葉さん!本当に親切に!ほら、美奈もお礼いいなよ!!」
・・・・言えるはずがありません。もう、泣きたいんだか叫びたいんだか分からない私ににっこりと笑うと、彼女は
「いいのよ。でも、チケットなくすなんて災難だったわね。あの子達だったなら、見つけたらこっ酷く怒るわ。ね、元気出して」
そう言って私の肩を叩きました・・・。本当に、人当たりはいいんです。恐ろしいほどいいんです。
すっかり騙された友人は呆然とする私を彼女に手渡す形で、私の売上らしいお金を私のカバンに入れて自分のスペースに帰りました。
もう、私の心境はイベントどころではありません。
とにかくもう、いやで。凄く嫌で彼女から荷物を受け取ると、その足で宅急便出しに向かいました。
始まったらすぐに出して、帰ろうと思って。

続く