[おじや]

小学校の時に友達からきいた話です。

あるところに老夫婦が住んでいました。
おじいさんは酒癖が悪く、家からお金を持ち出しでは
酒を買い、毎晩酔っ払ってはお婆さんに暴力をふるうのでした。
お金が少しもなくなるとこんどは着物や家財道具などを持ち出し
金にかえて酒を買いました。
お婆さんはぼろぼろになりながらも、毎朝おじいさんに
美味しい「おじや」を作ってあげました。
おじいさんは酔いが覚めるとそんなお婆さんの心遣いに心を打たれ
もう酒は止めよう…と思うのですが、
日が落ちる頃になるとどうしてもがまんができなくなるのでした。

その日の夜もすっかり酔っ払って家に戻ると、
土間におばあさんが正座して、おじいさんを恨めしそうに見上げました。
「もう家には何もなくなってしもうた...」
いつもは大人しいおばあさんのそんな言葉に
おじいさんは大変腹を立てました。
そして、おばあさんをに殴る蹴るの暴力を振るいました。
ひと通り殴り終えるとようやく腹の虫が収まり、
酔いつぶれたおじいさんはそのまま眠ってしまいました。

翌朝目覚めると、土間でおばあさんが血を流して死んでいました。
おじいさんは後悔したけれどもうどうにもなりませんでした。
「わしは何というばかなことをしてしもうたんじゃ...」

ふと見ると、おばあさんがいつもおじやを作っていた鍋の中に
何か入っているようでした。
おじいさんが見ると、それは、おじいさんのゲロでした。

そういえば....、毎朝食べていたおじやにはほんのりと酒の香りが
していたような...。
まさか...。

おじいさんが鍋を温めると、それはまさに毎朝食べていた
おばあさんのおじやの味になりました。

そうだったのか...。
おじいさんはすべてを理解し、泣きながらおじやをたいらげました。

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