[ばあちゃんの人形]
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じいちゃんが仕事から帰ってきて、母はじいちゃんに相談した。じいちゃんも前回人形がおかしく
なったときにひどい目にあったらしく(詳しくは教えてくれなかったそうだが)、今回はどうしても
人形を処分したかったらしい。で、ばあちゃんに言うと渋られるだろうから、ってことで、ばあちゃん
が寝てからコッソリ人形を寺に持っていくことにした。母も人形に対する怖さが先に立ってしまって
それに賛成したらしい。
で、その夜、じいちゃんは人形を持って出かけて、そのまま帰ってこなかったらしい。
人形はというと、次の日の朝、玄関先に落ちているのをばあちゃんが発見した。ばあちゃんはそれっきり
人形を誰にも見せなくなったらしい。
ばあちゃんはそれ以来、どこかおかしくなってしまったみたいで(じいちゃんがいなくなったのもあった
みたいだが)、結局母は叔父の家で暮らすことが多くなったんだと。
そんな暮らしをしてる間に母も大きくなって結婚して、俺が生まれるちょっと前にばあちゃんは病気で
入院した。母がばあちゃんの部屋を整理していると、押入れから箱に大事に入れられたあの人形が出てきた
らしい。それを見て母は愕然としたそうだ。
人形の顔一面に、何かを浴びたような黒いシミがあり、人形の至るところにお札が貼ってあったり経文が
書かれていたりのそれはすごい状態だったらしい。
母は慌てて寺に行き、住職(その頃は前の住職も亡くなってて、次の代だったらしい)に家まで来てもらい
お経をあげてから寺に引き取ってもらったんだと。で、お経をあげ終わって母がありがとうございます、って
言って住職をさて送ろうか、ってときに病院から連絡が入って「ばあちゃんが大変だ」と。

母が急いで病院にかけつけるとばあちゃんはもう虫の息だったらしく、しばらくしてそのまま亡くなったそうだ。
ばあちゃんのお骨は、母の希望で、寺でしっかり祓ってもらったあとの人形と一緒に埋められたらしい。

人形とばあちゃんの因果関係とかじいちゃんが結局どうなったのかとかはわからんのだが、ついさっき母に
聞いた話だ。母の解釈は、じいちゃんは寺に人形を預けにいく途中に「何か」あって、たぶんもう生きてない
だろう(当時捜索願も出したが、胡散臭い目撃情報しかなかったらしい)、人形についてたシミは、
返り血じゃないか、ばあちゃんはそれを理解しておかしくなったんじゃないか、ってとこで落ち着いてた。
じいちゃんもばあちゃんも「病気で死んだ」としか聞かされてなかったからショックだ・・・
しかも俺、来週ばあちゃんの墓参り行くんだよ・・・


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