[無邪気]

高校3年の夏休み、幼馴染から電話が来た。

「勉強手伝って・・・」
死にそうな声だ。

人の手伝いをする余裕なんかないんだが。

「ううう・・・化けて出てやる・・・」

彼女が言うとなんとなくリアルなので、
渋々行くことに。図書館にいるってことで、
そんなに遠くもないので歩いて行く。

クソ暑い昼下がりに、クソ重いカバンを背負って
だるそうに歩く俺。

途中、道路脇で子供が一人、地団駄を踏んでいる。
小学1年ぐらいの男の子だ。

ああ、このぐらいの歳の子は飛び跳ねたり、わけもなく
一人行進みたいなことするのが好きだものなぁ、と
しみじみ思いながら微笑ましい気持ちでその子を眺める。

そのうち、その子の動きがでたらめでなく、一定の連続した
動きになっていることに気づいた。
空中をつかむ→つかんで地面に投げる→バンバン踏む

この動きの繰り返しだ。なんとなく楽しそうに、一心不乱に
続けている。
何してるんだ?ちょっと気になって、男の子に話しかけた。

「こわいおじちゃんをねぇ、ころしてるの。」

暑さの吹っ飛ぶ答えに、聞き返すこともできずその場を去る俺。
図書館に着き、幼馴染に早速報告。

「あのねー、全部そっち系に結びつけるのって、どーかと思うよ?」
お前の影響じゃ!

「子供って、そーいうのあるじゃん?一人遊びっていうか、空想で
楽しむっていうかさ。その子もそれじゃないかな・・・・・あ・・・。」
あ、って何よ。

「それってさ、どのへん?その子がいたとこ。」
あ。

あの道路脇。
俺が「人間パーツ寄せ集め」に睨まれたとこだ。

俄然、元気になった幼馴染。ふむふむ言いながら、一人納得のご様子。
「ちょっと休憩。行ってみよか、そこ。」

休憩て。俺着いたばっか・・・

今来たばっかの道を今度は二人で辿る。

「なんでその時点で気づかないかなー?○○君は才能あるのにさー」

知らんうちに才能まで芽生えさせられてる俺。
そうこうしてるうち、問題の場所へ。男の子はまだいた。

「この子がやってたんだ・・・」彼女が宝物でも見るかのように
潤んだ瞳で男の子を見つめる。

彼女が男の子に近づいた途端、男の子が脱兎の如く逃げ出した。
ご丁寧に、逃げる間際も、念入りに地面をバンバン踏みつけて。

「あーあ、逃げられちゃった。聞いてみたいこといっぱいあったのに。」

どゆこと?残念がる彼女に聞く。

「○○君はホント、理解力が乏しいねー。あの子の動き、見てたでしょ?」

何かをつかんで(ちぎって?)は投げつけ、踏みつけ・・・

まさかあの子が、「人間パーツ寄せ集め」をあんな姿に?

「そゆこと。子供にこんな姿にされたんじゃ、そりゃ見られたくないもんねー」

「こんな姿」って。まだ見えてんの?

「うん、もうバラッバラだけどね。そのうち消えるんじゃない?」

どこからともなく「見るな・・・」という声が聞こえたような気がした。

「○○君、やっぱ才能あるよ、うんうん。」彼女が腕組みしながらしきりに頷く。
何でだよ。そのバラバラのやつも今回は見えなかったし。

「へ、充分だよ?あの子が見えたんだから。」
彼女があっけらかんと答える。

あの子、見ちゃいけないもんだったのか・・・orz


次の話

Part137menu
top