[着信あり]
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半狂乱の仲間たちをなだめて帰宅したのは夜遅くなってから。
疲れていたものの眠れるはずもなく、酒を飲んで気を紛らわせていた。
数日後、一通のメールを受信した。非通知。非通知着信拒否設定にしていたのに。
以下全文。
『○君、(彼女)です。急な事でびっくりしたと思います。
年々私は生きてる感じがしなくなったので、もう死んでしまうんだろうな、ってわかってたよ。
生きていても楽しくなかったし、意地悪な人ばかりで正直煩わしかったし。
嫌いな人を呪い殺してやりたいよね。私にはそれが出来るし。
でも、そうしようとしたら、(彼氏)君や、話を聞いてくれたり、慰めてくれた〇君や他の人達の顔が浮かんでくるの。
この世に未練なんか残すんじゃなかったよ。
どっちつかずで今も彷徨ってる。
電波にのればどこにでも行けるんだよ。すごく便利。
意地悪な人のとこに行って色々してやりたい。でも○君は賛成しないかな。
困ったことに、どんどんまとまりが無くなってきてる。
そのうち自分がわからなくなるかもしんない。
その前に仕返ししたいなあ。引っ張るだけでいいんだよ。
じゃあ、またね。』
メールを受け取る前日、俺は携帯のアドレスを変更していた。悪戯はもうこりごりしていたので。
明日になったら必要最低限の人に新しいメアドを知らせるつもりでいた。
誰も知らない俺のメアドに彼女からのメール。
偶然というより「私、こんな事出来ちゃうんだよね。」というメッセージに思えた。
やっぱり彼女は病んでたと思う。それを自分で持て余してたようだった。
病んだ心で彼女が誰か引っ張らないか、間違えて俺や彼氏の友人を引っ張ったりしないかガクブルしてたが、
今でも生きてるところをみると、彼女は分散してしまったに違いない。
彼女にとっては幸せじゃないかな?あれから誰も死んでいないし。
そのことを思うと泣けてくる。もっと優しく接してやれたのにってな。
そしたら恨みなんてきれいさっぱり消えたかもしれない。
それから一年くらいして『着信アリ』を観た。
あんな風にならなくてよかったと思った。