[幽霊に会った]
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朝出かける時、彼の部屋の前を通ったが声を掛ける勇気がなかった。
でも何かあったら?いや何かあったのは確実だ、でも最悪の状況だったら、死んでるとか・・・
いろいろな思いが頭の中をグルグル回り、不安と恐怖で一杯でただただ駅までの道を進んでいた。
気が付くと、そこは駅前のアパートを紹介してくれた不動産屋の前だった。
私はとっさに飛び込み、昨晩の事を店主に話した。

店主は驚いていた。
私が入ってくるなりまくし立てるように話したせいか、それとも理解できない内容だったからか。
『とにかく落ち着きなさい、ほらお茶でも飲んで』
っと、冷たい麦茶を出してくれた。
『えっと住所はどこだっけ?名前は?今台帳で確認するからちょっと待ってて』
じりじりした、彼が死んでるかもしれない、生きているなら救急車を呼ばなければ、早く彼の部屋へ行かなければ。

なにやら書類を確認していると、急に店主は落ちつかなくなった。
そして私にも一緒にと言うと、急いでアパートまで向かった。

部屋の前に来ると、店主も一瞬ためらいながらドアをノックした。
返事は無い。
『おい、居るのか?居るなら出て来い!』反応は無い・・・
私は彼が息絶えて倒れている姿を想像して寒気がした。
店主は鍵を開け、そしてゆっくりとドアを開いた。
『なぁーんだなんともないじゃないか!』その声に、私は一気に安堵した。
よかった生きてたんだ!何ともなかったんだ!そう思うと、早く彼の顔が見たかった。
『驚かすなよ!心配したぞ』そう言って部屋に飛び込むと

部屋はもぬけのカラだった・・・・

店主はまだ借りての付いてない部屋から深夜に声がすると聞いて、何者かが忍び込んでいると思ったらしい。
ワンルームの為、玄関から様子はすべて分かるのだか一応部屋の中を確認し、店主は安心していた。
『気のせいですよ、他の部屋か外の声でしょう』っと言ってさっさと帰っていった。

じゃぁ、あの声はなんだったんだ!?それより彼は誰なんだ!?
彼が幽霊に会ってたんじゃなくて、私が幽霊に会ったのか?
もう訳が分からなかった、その時他の部屋のドアが開いた。
『おはよーございます』住人らしい男に声を掛けられた、しかし私は走って逃げた。
彼もまた幽霊かもしれないと思うと、恐怖でおかしくなりそうだったからだ。

私はすぐにそのアパートを引っ越した。


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