[首狩峠]
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生協前で集合、明るくなってから出発。フツーのツーリングである。
私の愛車はエリミネーター400 友人はRZの改造品
排気量が多くても小回りが利かないのでどんどん離されていく
例の場所を教えようにも 時速90kmで遠い彼方へかっ飛んでいく友人に
教えるすべも無く、行きしはフツーに素通りしていった。
しばらくしてさびれた山村に差し掛かった頃、友人がテールランプで停車を指示する。
農道のガタガタ道を抜けた先にうどん屋があった。
こんな所にもあるもんだなぁと感心したが、友人曰く
『街で大量生産してるようなうどんはクズ、うんこだよ。
 こういう民家でやってるようなんが一番ウマいんよ、水もウマいしね』
入ると、なるほど普通の民家だ。
私「じゃあキツネうどんお願いします」 友『山菜天ぷらソバ 大盛りで』
「お前、【うどん食いてぇー】って言うてたやん。ソバて..」 『まぁ ウソだからね。』
さいですか...

うむ、さすが うどんの国。確かにうまい
ところで、今日ずっと気になってた事があったのでうどん啜りながら 友人に聞いてみた
 何で車じゃなくてバイクで来たのか―― って。するとニッコリ笑って
『ホラ、お前がもし取り憑かれても 置いて逃げれるしょ』
ブッ(;゚;ж;゚)゙;`;:゙;.

うどん食った後、テキトーに走って、さぁ帰るかー となった。
まだ秋口、4時になってもだいぶ明るい。
ただ、山ん中入ると樹木に遮られずっと暗くなる。頂上付近になると光が全然入らなくなる。
そして、件の休憩所に着く。
自販機と電灯、石造りの椅子が2つだけの寂しい場所だ。
エンジンを切った友人が辺りを見回し『んー 気合入っちょーね。』と一言。
何か見えないかと聞いてみたが『んー 見えへんね』と
『空気がエラい澱んどるから何やかやでそうやけどねー  待つ?』
あんまりヒマだったので二人石椅子に座って 次のレポートの調査どこ行くか〜 って話になった
『先月○浦の合戦場行ったけぇ 次○○鍾乳洞にしよう』と友人。
「えー 前回の時、【次は大歩危小歩危行に行こう〜】言うてたや、それに鍾乳洞も前に行ったし」と私
『いや、今度の○○鍾乳洞がまた【出る】ちゅーて聞いたんよ。人骨見つかったらしいし』
「いや、俺ら別にオカルト調査隊じゃないからね?もっとフツーん所に..」
そんな会話をしている時 
強い風が吹いた。 
カラスがギャアギャア喚き始めた。
同時にまたあの悪寒に見舞われた。
続いてヒドい頭痛が私を襲った。隣の友人も右目を抑えてうめいている
― 視界がぐわんぐわんする。友人が何か叫んでいるが途切れ途切れにしか聞こえない。
身体は身体で氷水に浸かったような寒さが。震えが止まらない。
隣の友人がフラっと立った?と思った瞬間――
右足が飛んできた。胸部にモロに受けた私はのけ反り もんどりうって石から転げ落ちた。
どうやら蹴り飛ばされたらしい。あの細足からは想像できない威力だ。
「何すんだ!」『コレでいいか!?』「は?」
いや、私に向かって言ってるのではない。
友人は何も無い空間にもう一度『コレでいいか!?』と叫んだ。いつのまにか風も止んだようだった。
友人は大きく深呼吸をした。そして私に『まだ頭痛い?立てる?』と聞いてきた。
さっきの胸部への蹴りでロクに声の出せない私は首をコクコク縦に振った。
『すぐに帰るよ。エンジン。』フラフラする足取りでバイクの所まで戻ると
寄り道もせず一直線に帰った。
生協前のファミレスで一息つく。
私「あのさぁ、いっぱい聞きたい事あるんだけども。」
友『あのさ、』「ん?」
『面白そうやからずっと黙っちょったけど、今朝からずーっとお前ん肩に何か憑いてたんよ』
「え!?」『3人くらい。』 「なぬ!?」
『やけど、山で風吹いちゅー時、そいつらが全部お前から逃げて行きよったんでウチもビックリしてん』
『で、その後すぐ頭痛くなったと思うんやけど 声が聞こえた』「声?」
『直接脳に響くような声で【 スワルナ! 】って』 「【座るな】って?あの椅子?」
『やろね、お前には聞こえんかったみたいやから 何とか退かそうと思って蹴った。ゴメンね』
「やから【コレでいいか!】って言ってたんか。  ..あ、犬はおった?」
『いや、何も見えんかった』「そか、何やったんだろあの犬。」
『あ。でもね、声が最後に言うたんよ』

【 三度目は無い 】って

『命が惜しけりゃもう近づかん方が良いね』「言われなくても行かねぇよ。」

後日友人が仕入れてきた地元の老人の話によると

何でもあの場所、数年前までヤシロが建ってたんだけど 土砂崩れで流されて
土台しか残ってないんだと、つまり椅子だと思って座ってたあの石はヤシロの土台。
まぁ尻乗っけられたら神様も怒るか。
しかし、
「ただ石に座っただけで代償がコレほどとは...」
家に帰ってから気づいたが、
あの日持ってた 携帯電話、MP3プレイヤー、デジタル時計。
全部ブッ壊れてました。
磁気だか電磁波だか原因は分かりませんが

「..全く、洒落にならん」


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