[山神]
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くだらない話をしながらも、俺たちは社に到着した。普通のこじんまりとした社で、
比較的新しい花と、団子が備えてあった。一応、手を合わせて拝んだ俺たちは、
sexの事しか頭に無かったので、ギャルらが待つ車へと急いだ。その降りの帰り道。
「危害は加えませぬ」
えっ?山道と平行した、山林の方から、老人とおぼしき声が聞こえた。
「危害は加えませぬ」
もう1度。こんな夜中に、人にしろ霊にしろ、どっち道怖いので、駆け足で
俺たちは降り始めた。
「危害は加えませぬ危害は加えませぬ危害は加えませぬ危害は加えませぬ」
俺たちと同じスピードで、山林の中の声も追ってくる。もはやパニック状態だ。
「あれなんだ!?」
「知らねーけど捕まったら以前と同じ暮らしは出来ないよッ!!」
前方に、山頂の広場が見えてきたその瞬間、
「危 害 は 加 え ま せ ぬ」
山林から、目の前にヌッとそれは現れた。顔は赤ん坊の様だが、体が、どう言って
良いのか分からないが、山猫の様な感じだった。俺たちは声にならない叫びを
上げ、車へと滑り込んだ。ギャル達も、何が起こったのかと言う表情をしている。
「どっ、どれだけベビーフェイスなんだよッ!!」
「助けてガリレオ!!」
山道を転落してもおかしくないスピードで、何とか車は市街へと到着した。
ギャル達も何かを察したのか、終始無言のままだった。何か白けてしまったので、
その日は番号やメアド交換して分かれる事になった。別れ際に、俺は聞いた。
「俺らを待ってる間、何か変わった事なかった?」
「う〜ん、直接車から出てハッキリ見たわけじゃないけど、00君たちが
登っていったすぐ5分後くらいに、野良犬か野犬みたいなのが車のそばに来たの。
人懐こいのか、しきりに鼻を鳴らして、車に体こすり付けてたよ」
「もう一匹いたのかな」
ギャルたちを降ろした後、バウアーがぽつりと言った。