[ミイラ商隊]

翌朝 おれは、目を覚まして五体満足なのを確認した。
「大丈夫だ・・・」
 まだ全身がなんとなく痛む。変な夢を見た。
 奴の奥方と俺は、確かに、まぁ、そう言う関係だ。
 その罪悪感からあんな夢を見たんだろうか?
 おれは、どっちかと言うと嫌な奴で他人の痛みなんて屁とも思わない方なんだが。
 寝床から起き上がって、リタリンと言う抗鬱剤をウイスキーで所定量以上流し込む。俺は、元々躁うつ病の気が有るのだ。
 シャワーを浴びて今日の現場に出動だ。
 おれの仕事は、色んな業界の著名人からインタビューを取って、業界紙に記事を書く事なのだ。
 今日の現場は、某農業大学の研究室だ。そこの教授に有り難いお話を聞いて記事をでっちあげる。

707 本当にあった怖い名無し 2006/05/08(月) 19:54:43 ID:RrF8x46d0
 研究室に着くと助手の学生が教授の所に案内してくれると言う。
 大学の一角はさすがに農大だけあって、きれいに手入れされた畑になっている。
「あそこです」
 鶴のようにやせた白髪の老人が、地面に鍬を振り下ろしていた。
 挨拶もそこそこに、今日のテーマは「医食同源」と言う事で話し始めた。
「よく俗説で、自分の具合の悪い部分の肉を食べればいいって言うでしょ?」
「ほぅ、」
「例えば目が悪い人は、鯛や鮪の眼肉を食えとか」
「有りますね。リュウマチで手が上がらない人に熊の手とかね」
「あれは効果が有るんでしょうか?」
「有るのも有れば、無いのも有ります」
「けど、同じ哺乳類なら、大体同じ成分で臓器が作られてるだろうから、
体を構成する要素を多くとると言う点では、理にかなってそうですが」
「まぁ、単純にはね。そうなんだけど、例えば髪の毛を食べれば髪が濃くなるなんて事は無
い訳で」
「そうですね。」
「しかし、外国の例で言うと興味深い事実が有るんですよ」
「へぇ、どんな事が有ったんですか?」
「南洋の人食い土人の話では、人間の脳みそを食べると賢くなるって言うんです。他所の部
族の兵士を殺してその脳みそを食べると相手の作戦が読めるようになる。こう言うんですね。
その他にはアメリカで連続殺人鬼がやはり、殺した女性を調理して食べておったと。そうする
と自分が殺される妄想を抱くようになった。殺せば殺すほど殺される恐怖を味あうわけですな
。これから考えると共食いの場合は細胞レベルでの消化が出来ずに、神経細胞や脳内物質
が消化器官から本来の持ち場へ帰って元の場所でやっていた様に働いてしまう。記憶ごと運
ばれてしまう・・・。どうされました?」

おれは、涙が溢れて止まらなくなっていた。

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