[トレースするおやじ]

久しぶりの学生時代の友人から飲み会にこない?と誘われた。
あいにくの雨。
バスには乗り遅れるし、電車に乗ったら人の傘がズボンに触れるし、
イライラしながら30分遅刻したけど待ち合わせの居酒屋に。
ひさしぶりなので話が弾み、ビールで乾杯のあと、梅酒、
ワインと酒も進んだ。
カラオケ行って帰ろうと思ったときは終電ギリギリ。
バスはもう無かったのでタクシーにのることにした。
タクシー乗り場には4人並んでいた。
私の前にはちょっと危なそうなおじさん。
なんかブツブツ言っている。
中々タクシーもこないのでちょっと興味が沸き、聞く事にした。
「う〜今日は折角の集まりだったのに雨か。バスには乗り遅れるし・・」
なんか私と一緒?
「電車に乗ったら人の傘で濡れるし、居酒屋には遅刻するし・・・」
こいつ私の今日の事知ってる!!早くタクシー来いよ!
こういうときに限ってタクシーがこない。
乗り場にはついに二人だけになってしまった。

聞きたくないのにオヤジの声が耳に入ってくる・・・
「久しぶりの友達とは話が弾むねえ。まずはビールで乾杯っと。
 お次は梅酒。ワインも飲んでちょっと酔ったかなあ?」
「終電はギリギリ、駅からタクシーで帰ろうとしたら変なオヤジが・・・・」
逃げ出そうと思った瞬間タクシーが来た。ふっと見るとオヤジもいない。
ああ、助かった!!
なんか見慣れないタクシーだったが、その場にいたくなかったので
タクシーに乗り込み、今までの恐怖を思い出してグッタリした。

タクシーは走っている。行き先も行ってないのに。
しかも自分の家の方向だ。
「今日は最後に怖い事があって大変でしたねえ」と運転手。
「!!!!」
運転手の顔を見ると・・・先ほどのオヤジ・・・
後はどう帰ったのか覚えていない。
タクシーを無理矢理降りた事だけ覚えている・・・・


次の話

Part127menu
top