[掴む人、再び]

肩が急に重くなった。【掴まれ】た!そう感じた途端に、部屋の中からがりがりがりがりと音が響き出した。
がりがりがりがりがりがりがりがり……がり
音が止む。

次の瞬間。腕、右拳がはねあがった。

窓ガラスを破った。意識に霧がかかる。音は聞こえない。
次には肘がはねあがる。割れた窓ガラスの枠に残ったガラスにぶち当たり、砕いた。
意識はまだ鈍い。立っていれない。

倒れこむ。途端、感覚が戻ってきた。
皆がよって来る。
どうした!おい!大丈夫!?
声がかけられて

右腕がはねあがった。右手と肘か熱い。血が跳ねた。
右腕はびちびち動き、何かを掴もうとして、手を広げ、閉じて指がぐにゃぐにゃと動く。
ハタさんが右腕を押さえようとした。
けど無駄だった。右腕はハタさんをはねのけた。

瞬間、ごきりと体の中で音がした。

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

絶叫した。親指がどうにかなった。それでも指はうしゃうしゃとうごめく。
もう駄目だ。痛すぎて意識が飛びそうになった瞬間、先生が走ってきた。
先生は小さい刀、ナイフくらいの刀を右手に持ち、俺の右腕を斬りつけた。
瞬間、右腕が動きを停めた。そして意識が飛んだ。

起きたのは、椅子の上だった。ぎっちりギブスで右腕を固められて、長椅子の上に寝そべっていた。先生に膝枕されて。
「あ、大丈夫〜?」
先生はふにゃふにゃ笑った。それを見て、生きてるんだな、と実感した。
「俺、どうなったんすか?」
「右手の親指を脱臼、手の甲と肘をばっさり斬って、掌も少し切ったみたい。合計18針縫ったらしいよ〜」
「……俺、どうしたんすか?」
「【掴む人】に【掴まれ】て右腕を【握られた】んだよ」
「……【掴む人】はどうしたんすか?」
「斬ったよ。バサ〜って」
その後、皆が来て心配してくれた。その後でハタさんに家に送って貰い、眠りについた。

一週間、ずっと家に居た。先生やトモヤ、ユウさんハタさんが交代で泊まりに来て、世話をしてくれた。
その時、先生に色々具体的に聞いた。

右腕がなくて、指を口にくわえた【掴む人】だったらしい。その【掴む人】は、左腕を俺の右手に入れて
(その左腕が俺の右腕の中にずぶずぶ入ってたらしい)俺の右腕を【握った】。それを見て、落とせる人
じゃないと感じた先生は【意付け】された小刀(刃は削ってあって、実際は斬れないヤツ)で【掴む人】を斬り殺した。(意付けとかの言葉は、後で説明したい)

俺は完治するまで2ヶ月の怪我(中指の健が切れてた)をして、さらに三ヶ月のリハビリをする事になった。
この件があってから、何かヤバイものが近くに居ると、右腕がビクッとなるようになった。

怪我をして、霊感モドキを手に入れたワケです。得したんだか損したんだか。


次の話

Part125menu
top