[割り込んできた声]

 私の親友がひとり暮らしをしていた頃の話。
 彼女といつもの長話をしてたのですが、いいかげん切ろうと思い、
「じゃあね、また!」と言いました。
 そしたら彼女も「じゃあね〜」と返してきたのですがそのあと…

 「ばいば〜い」

 …太い男の声でした。なんか不気味なものを感じ、思わず悪寒。
 しかし、彼女には当時彼氏がいたので、
ふたりで同じ部屋に今いるんだなと思ったのです。
 後日、彼女に会ってご飯を食べていたとき、ふざけて
「この間の電話、近くに彼氏いたでしょ?」と、振ったら彼女、
「ううん。あたしひとりだったよ」

…え゛?「ホントに?部屋に彼いたんでしょ?実は」
 そしたら彼女、真顔で言うのです。
「いないよ。あのとき部屋には、あたし以外誰もいなかった」
 さらに困惑気味に、
「なになに〜?なんでそんなこと聞くのよ!
なんか聞こえたの?気持ち悪いこと言わないでよ!」
 
 「いや、別に。何でもない。気にしないで!」
…って答えといたんですけど…今考えると…やっぱ怖いっス。
 彼女のすぐ隣、しかも彼女の受話器に、彼女の唇におのれの唇を寄せて、
「ばいば〜い」って言った見えない男が…。

ちなみに彼女、現在はそこを出て実家で暮らしています。
私は未だに、この話を彼女に言うことができません…。


次の話

Part125menu
top