[おじさんの寝言]
今はもう亡くなってしまったのですが、俺が小学生の頃、
父の古くからの友人の「おじさん」(と俺等兄弟は呼んでいた)
が時々家に遊びに来ては泊まっていた。
おじさんは当時60過ぎていたが、ずっと独身で身寄りがなく
おれたち兄弟はかわいがってもらっていたので割となついていた。
いつも父と夜遅くまで将棋をして、夜中の3時ぐらいに1Fの来客用の部屋で
勝手に布団を敷いて寝ていたのを覚えている。(両親の部屋は2F)
俺は、その日不意にトイレに行きたくなりこもっていた。
来客用の部屋は廊下を挟んで向かいにある。
するとその向かいの部屋から声がするのが聞こえた。
最初、なんか薄気味悪いわめき声っぽかったので(寝言の声というのは
とても薄気味悪い声です)すっごく怖くて俺はトイレから
出れなくなってしまった。
「おーい・・」「はやくー・・・」「うーん・・」「うーん・・・」
夜中なのでシーン・・としているため、
おじさんは起きてるのかと思うほど、そのわめき声ははっきり聞き取れた。
トイレでガクブルな俺。
「そらをみろー!・・」「そらがまっかだー・・」「うーん・・」
「○江ー!!」「○江ー!!」「はやくにげろー・・」「うーん・・」
「ははは・・」「もえちまったヨー・・」「うーん・・」「みーんな・・」
「東京がもえちまったよ・・」「○江ー!!」「うーん・・」「うーん・・」
はっきり聞こえました。(ちなみに「○江」という人は誰なのか知りません)
俺は耐えきれなくなって、泣き声でおじさんが起きないように
しゃっくりべそかきながらトイレからそーっと出て、
ダッシュで両親の布団に潜り込んだのを覚えています。
母は震えている俺を見て寝ぼけながら「ん〜?どした?」
と聞いてきましたが、俺は怖くて怖くてなにも言えませんでした。
翌日、おじさんはなにも覚えていないようでしたが、
その日以来、俺はおじさんが怖くて遠ざけるようになりました。
ハタから聞いたらあまり怖くないかも知れませんが、
当時の俺にはほんっっっっとうに怖くて未だにトラウマです。