[焼却炉に潜むもの]

こないだ居酒屋で先輩が話してくれた話。

先輩はMさんという私の中学での7つ上にあたる先輩。
豪胆で腕っぷしも強く、面白い。私の尊敬するナイスガイの一人だ。
話は3年前にMさんら男女4人が東北は宮城を車で旅行していた頃に遡る。

旅行とはいえ金もない若者なのでパーッと遊ぶ事も難しい。
やはり胆試しや花火にいきつくわけだが、宮城には出るという噂のベニーランド
という公園だか遊園地だかよく分からない場所があったらしい。
とりあえずそこへいこうと彼らは真夜中の12時すぎに車を走らせた。

コンビニ等で道を尋ねつつベニーランドに着くと・・・・
まーっくらで小規模な遊園地が見えてきた。
真夜中と静けさにミスマッチなかわいらしい怪獣の人形や遊具。
それなりにモダンホラーな雰囲気は出ていたらしい。
Mさんは「軽くサイレントヒルみたいだった」と言っていた。

入り口の横にトイレがあり、そこの柵を乗り越えてMさんらは不法侵入。
確かに出そうな雰囲気があったらしく、Mさんの友人のSさんは完全に怯えていた。
ちょっとした物音や懐中電灯が照らし出す木馬に大仰なリアクションを取って
笑いを演出してくれたらしい。

まあ普通の胆試しならこのくらいの盛り上がりを見せれば上々。
ところが帰り際に林の中にある遊歩道を通っていると暗闇の中に
かなり大きな焼却炉を見つけた。
横幅が5メートルほどあり、とても長い煙突がついた錆びた焼却炉。

さすがにこの時は全員が素になりなんともいえぬ不気味な雰囲気に凍りついた。
Sさんは「M,マジ帰ろう」と連発していた。
だが強気なMさんは焼却炉を見てみようと3人を伴って道を進んだ。

近くで見ると心臓が鳴るほどに不気味だった。
とはいえ所詮、焼却炉にすぎないのでものの2,3分でMさんの興味は失せた。
「かえろ」と完全に怯えているSさんを連れて車に戻ろうとした。

焼却炉のほうで「ンううウ!」と唸り声がした。
4人とも叫んでその場から一目散に逃げ出した。

M「な、なんだよ今の!」
SさんとMさんの彼女は完全に怯えている。
S「かえろうよ!!!やばいって!!」
焼却炉のほうを見つめる、もう声はしない。
いや、誰かの財布が落ちている。
M「あの財布誰の!?」
S「やべええ・・・・・俺のだ・・・」
M「早くとってこいよ!」
S「ハァーーマジかよー・・・」
Sさんはガタガタ震えながら財布を取りに焼却炉へ戻った。
その時、ガタン!という音とともに焼却炉の扉が開いた!
戦慄する4人。

「なんだおめえら!」
「うるせえよ!」
中からルンペンが出てきた。寝てたらしい。
M「てめえ・・・・何やってんだよ!!!」
「寝てるんだよ!」
M「そんなところで寝てんじゃねえよこの乞食野郎!!」

うん、怖くないけど実際にあった話。


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