[峠のトンネル]

3年前の夏に私が体験した話です。
夜になるとほとんど車通りの無い峠の頂上にトンネルがある場所があります。
私達の間で結構恐れられているトンネルなんですが、その日は忙しい友人も
休みな人も多く、トンネルへ行ってみようという話しになり1台の車に5人乗せ
て行くことになりました。
友達と会う度に「あそこ怖いよねー」とか「この前○○の様子が変わったのは
トンネルに行ったからだ」とか話をしている割に、いざ行くとなるとその場所
を知っている者はいません。何度も行ってる面々なのに、その日はどうしても
覚えられなかったのです。
トンネルに行くのを諦め、とりあえずドライブをしようと走り出したのですが
適当に走った道が見覚えのある道に…皆「あ、この坂だよ」と例のトンネルへ
と続く坂道へ辿りついたのです。

トンネルへ行く最中にも奇妙な場所が転々としている訳で、気味の悪い貯水
タンク・廃屋・廃マンションを回っていきました。
街頭が全く無くなり、一車線になり曲がる道を登り、そろそろトンネルなんだ
なって雰囲気がしました。
「お、トンネルだ!」「うわぁ…不気味…」
という声で先を見ると、ぽっかりと全長150mくらいのトンネルが現れました。
そんなに長くないはなのにトンネル内に照明が無い為、先が全く分かりません。
いつもは、こういう”恐い場所”に入る時は記念撮影を撮るのですが、今回は
早く帰りたい気持ちが勝ってトンネルの中へ進んで行きました。

普通のトンネルでした。トンネルの先にある記念碑?みたいな車1台止まれそうな
場所でUターンをし、戻ろうと再度トンネルへ向かいました。
一度何ともないと強気なもので「おい、トンネルの中でライト消してクラクション
鳴らせてみようぜ」という提案に皆「やろうやろう」と盛り上がってきました。
二度目の通過。運転手がトンネルへ入った瞬間に何を血迷ったか走行中にライトを
消しました…
「走りながらはヤバイだろ!」と友人が声をあげます。続いて運転手の悲鳴混じり
の声…「消えた!勝手に消えた!!」助手席に乗っていた者が必死で運転手を掴も
うとします。その瞬間「うわぁ…Sが(運転手)いない!Sがいない!」と叫びだし
ます。パニックの中「ぱーーーん」クラクションが聞こえ出しました。同時に
”ガガガガガガ・・・ドーン”トンネルに車体が擦れ偶然前から来た車とぶつかり
車が止まりました。
続く