[雨(師匠シリーズ)]
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屋上は掃除をしてますか?」
「掃除?いや、してたかなあ。つるつるした床でいつも結構
 きれいだったイメージはあるけど」
俺は心でガッツポーズをする。
「屋上の掃除をした記憶がないのは、業者に委託していた
 からじゃないですか」
何年にも渡って月に1回くらいの頻度で、放課後、生徒たち
が帰った後に派遣される掃除夫。床掃除に使った水を、不精
をして屋上から捨てようとする。自然、身を乗り出さずにす
むように、手すりがないところから・・・
「次の日濡れた地面を見て噂好きの女子高生が言うんですよ。
 ここにだけ雨が降ってるって」
僕は自分の推理に自信があった。
幽霊の正体みたり枯れ尾花。
「お前、オカルト好きのくせに夢がないやつだな」
なんとでも言え。
「でも、その結論は間違ってる」
京介さんはささやくような声で言った。

「水で濡れた地面を見て、小さな範囲に降る雨の噂が立った、
 という前提がそもそも違う」
どういうことだろう。
京介さんは真顔で、
「だって、降ってるところ、見たし」
僕の脳の回転は止まった。
先に言って欲しかった。
「そんな噂があったら、行くわけよ。オカルト少女としては」
高校2年のとき、こんな風に夜中に忍び込んだそうだ。
そして目の前で滝のように降る雨を見たという。
水道水の匂いならわかるよ、と京介さんは言った。
俺は膝をガクガクいわせながら、
「血なんかもう、流れきってるでしょうに」
「じゃあ、どうして雨は降ると思う」
わからない。
京介さんは首をかしげるように笑い、
「洗っても洗っても落ちない、血の感覚って男にはわかんな
 いだろうなあ」
その噂の子はレイプされたから、自分を消したかったんだよ。
僕の目を見つめて、そう言うのだった。


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