[目の前]

彼女が一人暮らしを始めて最初の夏。

「風呂上がってそのまんま寝るなんて実家じゃできないよね・・・」
窓からの風を受けてアパートのソファでうたた寝をしていた、アミ戸にしてね。
仕事の疲れが風呂上がりでドッと出たようだ。

「このまま寝たらカゼひくかも・・・でも気持ちいい・・・」

 
    (コツン)


「・・・?なんだろ?」

(コツン・・・・コツン)

窓に小石があたっている音のようだ。

「もう、気持ちよくなってきたのにな・・・誰だよぉ」
よろよろしながら窓辺に向かっていく「あれ?ここ二階じゃないっけ?」

アミ戸のロックをはずして顔を出してから気がついた。
夜のせいもあって全然見えない、彼女は近眼。

「そーだ、めがねめがね・・・」

目の前に知らないおっさんの顔があった。


次の話

Part121menu
top