[切ない霊体験]
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宿泊して1週間が過ぎた頃、1日だけどうしても違う部屋に泊まって欲しいと
懇願されて案内された部屋が仏間でした。

自分は前述したように、幽霊とかそういうの信じないタイプなので、
仏間でも全然、違和感とかもたない人間なんで普通に快諾しました
子供の頃、両親の実家に遊びに行ったときとかも普通に仏間に泊まりましたし
田舎のもてなしで通される部屋は仏間というのが小さい頃からむ意識の内に
あったのかも知れません

布団に入り電気を消して眠ろうとしても廊下の電気があってどうも寝付けません
自分の足の方に障子の扉があるのですが、一部、素ガラスなので廊下が見えます
寝付くまで色々なこと考えてました。仕事のこと、彼女のこと、これからの自分
ホント取り留めのないようなことを考えてたと思います

どれくらい時間が経ったでしょうか、ふと足元の廊下に目をやると、ガラスが微妙に
反射して、白い煙のようなものが動いてるような気がします

「えっ火事?」自分は反射の先が仏壇なので、線香とか消し忘れたのかと思い
振り向こうとしましたが、体が動きません
視線はガラスを直視したままです。その白い煙のようなものは、だんだん人の形になっていきます。映画のリングの貞子のように仏壇からゆっくりと這い出してきました

「うわぁ〜〜〜〜」自分では絶叫したつもりでしたが、声になりません
視線は固定されたままですので女性の顔を見ることはできませんでしたが、顔に
長い髪の毛があたる感触がしました。
彼女はゆっくりと旋回しとうとう、自分の視界に顔が入ってきました。
「????あれこの人?」不思議と恐怖はありませんでした。
むしろ「どこかで会ったような?」という感情があり時間にして一分くらいは、こちらが金縛りにも関らず見つめてしまいました。(笑)その間、彼女はずーと微笑んでいました
が少し寂しそうな顔をするとまた煙のように消えてしまいました。

次の日、自分の疑問は旅館の娘さんを見て氷解しました。似ている!
女将さんに朝食のとき、なんとなく訊ねてみました。娘さんにお姉さんいますかってね
そしたら何かを悟ったらしく、逆に質問されたので夕べの出来事を全て話しました
そしたらボロボロと泣きながら6年前に事故で亡くした娘がいる事を話してくれました
なんでも娘さんは結婚が決まってた相手がいたらしく、それが俺にそっくりで俺が
泊まりに来たときは家族揃ってびっくりしたらしい
両家公認で家族ぐるみで付き合っていたらしいけど娘さんが不慮の交通事故で他界
フィアンセの落胆ぶりと家族の落胆は大きかったらしいがタマタマ俺が泊まりに来たら
一瞬だけど家族も姉さんが生きてた日々を思い出してすごく良かったと女将さんに言われて俺も思わず貰い泣きしてしまった。あとで遺影の飾ってある部屋に案内され
たとき、そこには夕べと変わらない微笑のやさしい娘さんの写真があった。
また目頭が熱くなった。


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