[黒板に書かれた「呪」]
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 夜、校長をはじめ学校側の教師数名とPTAからの数名の立ち会いのもとに、
霊媒師を呼んでの御払いがその教室で行われる事になった。
外は雨が降り蒸し暑いというのに、教室の中はうすら寒く、異様な空気が流れていた。
 午前二時を過ぎた頃、霊媒師が「来ました。」と言った。
ろうそくの薄明かりに霊媒師が一心にお払いの言葉を唱えている中、
皆は黒板に釘付けになった。
 そこには何も無いのに「呪」の字がゆっくりと現れ、
字からは血がしたたり落ちるように流れた。次の瞬間字はフッと消えた。
霊媒師はその場で倒れ、保健室に運ばれた。
 しばらくして霊媒師が目を覚ますと、
「お払いすることができませんでした。」と言った。
理由を聞くと、昔この土地で死んだ女の霊が現れたという。
立ち会いの何人かもその時女が見えていた人がいて、
髪が顔が見えないくらい長く、白い服で、口から舌がへそくらいまで垂れていて、
手の指先が切られ、その指で「呪」の字を書いていたと、皆同じ事を言った。
 霊媒師によるとその女は強姦され、その時のショックで狂ってしまい、
自分の指を噛み切り、自分の舌を噛み切り、井戸に飛び込んで自殺をしてしまったらしい。
その井戸が教室の真下の位置に埋められており、だから女はそのクラスにとり憑いたと言う事だった。
 女の怨念は凄まじく、お払いする事ができない為、その教室はおふだが貼られ、
誰も入る事が出来ないように鍵もかけられ、一年の教室も別の教室に移されることになった。
 今でもその教室には「呪」の文字が乾く事無く残っているらしい。

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