[人は死ぬとどうなるか?]

大学時代、よく散歩をした公園にはハトがたくさんいた。
舗装された道に、一体なにがそんなに落ちているのか、
やたら歩き回っては地面をくちばしでつついて行く。
なかでも、よく俺が腰掛けてぼーっとしていたベンチの
近くに、いつもハトが群れをなしている一角があった。
何羽ものハトがしきりに地面をつついては、何かをつい
ばんでいる。
(このベンチに座って、弁当の残りカスでも投げている
 人でもいるんだろう)
と思っていた。

2回生の春。
サークルの新入生歓迎コンパを兼ね、その公園の芝生に
陣取って花見をした。
綺麗な桜が咲いていた。
別に変なサークルではなかったが、ひとりオカルトの神の
ような先輩がいて、俺は師匠と呼んで慕ったり見下したり
していた。
その師匠がめずらしく酔っ払って、ダウンしていた。
誰かがビール片手に
「最初に桜の下には死体が埋まってるって言ったのは、
 誰なんだろうなあ」
と言った。
すると師匠がムクっと起き上がって、
「桜の下に埋まってる幸せなヤツばかりとは限るまい」
と、ろれつの回らない舌でまくしたてた。

すぐに他の先輩たちが師匠を取り押さえた。
暴走させると、新入生がヒクからだ。
俺は少し残念だった。
「ちょっと休ませてきますよ」
と言って、いつも座っているベンチまで連れて行き、横に
ならせた。
しばらくしてから、水を持って隣に腰掛けた。
「さっきはなにを言おうとしたんです?」
師匠は荒い息を吐きながら、
「そこ、ハトがいるだろ」
と指をさした。

続く