[失踪したMくん]前ページ

「トゥルルルルル」
時計の針が夜中の3時を過ぎたころでしょうか。
机の上の電話機が鳴りました。

「はい?」
僕は寝ぼけ眼で電話に出ました。
「・・・・・」
受話器からは何も聞こえません。
「もしもし・・・・!」
その時僕は気付きました。

会社の電話は、ビジネスホンで、
外線と内線が使えます。
今の呼び出し音は、内線電話の音だったのです。
僕は慌てて立ち上がると、
室内を見渡しました。

広い室内で、電気はここしかついておらず、
人の気配もありません。

僕は気味が悪くなり、
何も言わずに受話器をもどしました。

「トゥルルルルル」
すると、また呼び出し音が鳴りました。
僕はびくびくしながらも、
電話のディスプレイを覗いてみました。

「302」
かけてきているデスクの番号が表示されていました。
Mくんのデスクでした。
僕は怖くなり、思わず立ち上がりました。

「すん、すん、」
その時、僕の耳元で、
聞いたことのある音が聞こえました。

Mくんの鼻を鳴らす音です。
僕が振り向くと、
そこには誰もいません。

疲れているんだ・・・
そう思い、
僕はまた机に向かおうとしました。
明日までに書類を仕上げなければ、
契約はおじゃんです。


そこにはMくんがいました。
パソコンの画面一杯に広がる、
Mくんの顔。
こちらを無表情に見ています。
そして一言言いました。
「来いよ・・・」


僕は悲鳴を上げて会社から逃げ出しました。
そのまま僕は、会社を辞めてしまいました。
風の噂では、従業員が次々と辞め、
会社は倒産したそうです。


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