[狐憑き]
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まぁ色々あって、結局見つけたのはK先生。
Aは最寄りの駅の駅員さんに、駅員の事務所に保護されてたんだけど。
駅員さんが真っ青な顔して、「なんなんですかこの人?」みたいになってるから、
あーやっぱり暴れたのか、と思って話を聞こうとすると、駅員さんは怯えた感じで
1枚の紙をK先生に渡したそうだ。

それには、狐が上半身を上げて、手で招いてるみたいなポーズの絵が描いてあった。
白い紙に、グルグルって感じで塗りつぶした、影みたいな真っ黒い狐。明らかに狐。
(お稲荷さんみたいなポーズって言えばわかるかな?)

驚愕しながら「これどうしたんですか?」って聞くと、駅員さんが言う事には、
彼女の身元が分からなかったから聞いても全然返事もしない。
じゃあ文字なら書けるかと思って、ボールペンと紙を渡したそうだ。

そしたら、椅子に座ったままいきなりガクンッ!!って頭を垂直に真上に向けて
(もう完全に真上。90度。駅員さんも仰天したらしい)
ボールペンを鉛筆持ちじゃなくて、幼児がスプーン握るみたいに5本の指で握って
天井睨みつけながら紙の上をボールペンでぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。
当然、グチャグチャな絵が出来るだろうと思って駅員さんが呆然としてたら、
出来たのはこの狐の絵だったと。

K先生も駅員さんも完全にびびっちゃって、まあ警察とか色々あった後に
Aは自宅に帰り、可哀相だけどまた監禁状態にするしかなかったそう。
K先生もOも、軽々しくAの話ができる雰囲気もすっかり無くなったって。

で、また数日後なんだが。

真夜中、K先生の1人暮らししてる家に電話があった。
こんな時間に電話してくるのはOくらいだって思って電話を取ると、声はなんとA。

「もしもし、K?」奇声とかじゃなくて、普通の声で話しかけてくる。
「A、治ったのか!!良かったなー!!」大喜びするK先生。
Aは嬉しそうに同意しながら言葉を続けたそうだ。

「うん。私の所からはもう出ていくって。次は、Kのところにいくよ」
ガチャ。

反論も質問も受け付ける暇一切無く、電話は切られたらしい。
もうK先生めっちゃめちゃビビりまくって、泣きそうになりながら隣町で1人暮らししてる
弟の所にバイクで転がり込んで、震えながら一晩過ごしたそうだ。

普通の話なら、ここで狐はK先生の所に行くんだろうけど、
結局その後はなーんも起こらず。
Aもいつの間にか普通の子に戻ってて、( ゚д゚)ポカーンだったそうだ。
でも、ぶっちゃけ怖くてもうAとは遊んだり出来なかったらしい。
いまだに年賀状だけは送ってるけど、とか言ってた。


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