[継呪の老婆]
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私は、闇の中で眠りについていた。不意に、強烈な渇きを覚えた。急に、
暗闇から引きずり出される。私の喉は張り付いて、一滴のつばも出ない。
私は、舌をたらし、喉を掻き毟って水を求めた。ふと、遠くに人間が見えた。
私は近くの木に噛み付いた。水分は吸えなかった。遠くに見える女。あそこへ
行けば、水がもらえる・・・。数日後、私は女の家の入り口に立っていた。
女の姿が少し大きく見えた。また数日後、私は再び暗闇から引きずり出された。
やけ付いた喉が潰れそうだった。今日は、ついに、女の姿が大きく見える所
まで近づいた。
手を伸ばせば届きそうだ。だが、私の手は動かない・・。
「水をください」その一言を伝えたくて、私は、動く部分をとにかく彼女に近づけた。
舌だけが動く。舌を長く伸ばし、必死に女に訴えた。だが、女は
私を救おうとせず、悲鳴を上げて逃げ去った。私は再び闇に引き戻された。
「ドウシテ キヅイテクレナイノ コノカワキヲ イヤシタイ ダケナノニ」
私は、唯一動く舌で暗闇の中で必死に水を求めた。だが、希望は見えている。
「モウスグダ モウスグ ミズヲ モラウコトガ デキル」私は確信した。
苦しみの中に喜びの笑みを浮かべた。
ついにその日が来た。私は女のすぐ近くにいる。渇きを潤すことができる
喜びが、私を支配した。
怯えた女が、何か言っている。大粒の涙を流して。
「私、死体を見たときに気づいたの。」水分がもったいない。水を無駄にする
この女が私は許せない。
「お父さんが、親戚を説得してくれたから。」私は、
水をもらう事を諦めた。水の大切さの分からぬこんな女に頼んでも仕方ない。
そうさ。奪い取ればいい・・・・・。
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