[クビ]

ある深夜の出来事

俺はとあるマンションで一人住まいをしていた。
その日は休日だったので、夜遅くまで友人たちと遊んでしまい、
家に帰ったころには日付はとうに変わっていた。
そのあと少しお酒がはいっていたせいもあり、
すぐにベッドにもぐりこむと、泥のように深い眠りについていた。
と――

「ピィ〜ンポォ〜〜ン」

俺は何か奇妙な、やけに間延びしたチャイムの音で目を覚ました。
…なにやらキツネにつままれたような、変な気分だった。
先ほどまでぐっすりと眠りこけていたのは、自分でもわかっているのだ。
それはもう、例え耳元で怒鳴られても起きないぐらいまでに。
それなのに……

 「ピィィ〜ンポォォ〜〜〜ン」

…………
俺は時計を見た。
針は深夜二時を指している。
全身に何かイヤな汗が、じっとりとふき出してくるのがわかった。
俺は息をするのも忘れるぐらい、ただただじっと硬直していた。
極度の緊張である。
そして……

「ピイィィィ〜〜ン……ポオォォォ〜〜〜〜ン……」

……駄目だ。
このままでは、俺は発狂してしまう……

俺は勇気を奮い立たせた。
もともと、負けず嫌いな性格が功を奏した。

負けてたまるか……
負けてたまるか!!!

俺は心の中でそう何度も唱えると、
気合を振り絞って、石のような体を動かした。
全身が震えている。
少しでも気を抜くと体が崩壊しそうだ。
俺は一歩一歩、生命を削る思いで踏みしめていった。

今にも死にそうなほど呼吸が荒い。
心臓だってもう、いつ爆発してもおかしくない。
負けてたまるか!!!
俺は決死の覚悟でドアノブに手をかけた。

ギイィィィィ……

…イツモト違ッテ、不気味ナ音ヲ立テテドアハ開イタ

何カブツブツ言ッテルノガ聞コエタ

俺ハ動クコトガ出来ナカッタ

狂ッタヨウナ笑イ声ガ辺リニ響イタ

……………………


アァアァ………

マケテ……タマルカ………

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