[遭難]

この話は今年、スノーボードに行った雪山で起こった不思議な出来事です。

実際、雪山で吹雪かれたりすると、不安な気持ちになりますが
私たち4人の男女はまさにそんな状況に陥りました。

ブリザードを避けようと、大木の陰に一塊になった私たちは
吹雪が止むのを思い沈黙の中、待つだけでした…


しばしの沈黙の後、友人Kが口を開きました。
「この様子じゃ、止みそうにないな…」

そんなKに、雪山での遭難なんて想像したこともない私は楽観的に言いました。
「平気だよ。ゲレンデからそんなに離れてないし…ほら、携帯も持ってきた」

「電話してよ。私怖い…」
そういって不安な目を向けたM子は、連れのT未にしがみついた。

「わかった」
幸い電波は通じていた。
電話の向こうでその場を動かないようにと、執拗に言い含められた。

「すぐにレスキューが来るって」

それから多分…15分後くらいだろうか
突然私の携帯が鳴り出し、止んだ。
「なに?今の?」
「わからない。非通知みたい」
「こんな時に間違い電話?」

そしてさらに15分くらい経った。
「遅くない?」
「落ち着けよ。こんな状況じゃ探すのだって大変だろ」

そうは言うものの、冷え込みは増すばかりだった。

「おおーい!おおおーい!!」
人の声が聞こえてきた。

「助けに来た!」
「おおおーい!ここだあー!おおおおーい!」

一同は胸をなでおろした。助かったと…

「あれ?」

Kが不信な声を上げた。
「なんか声が遠くなってないか?」
「吹雪で声の出処がわからないんじゃ…」

「うそだろ!?」
私たちは精一杯叫んだ。

しかし、助けの声は聞こえなくなり、吹雪く風の音ばかり聞こえる。

もう一度電話をしようと携帯を見た。
圏外だ…。

「もう限界!私行くからね!」
突然M子が吹雪の中を走り出した。

「おい!待てよ!」
止めようとしたKだったが、雪に足を捕られ転倒してしまった。

「M子!!」
T未が狂ったように叫ぶ中、私はM子の後を追った。

下手をすれば全員死んでしまうかもしれない…
そう思いながら、ちらほら見えるM子の後姿を追う。
しかし、彼女の足取りは意外に早く、その姿はしばしば吹雪きに消える。

「止まれって!死んじまうぞ!」
そう叫びながら追う私は、ふと妙なことに気がついた。

彼女の足取りは迷うことなくどこかを目指しているようだった。

…一体どこを目指してるんだ…?

吹雪で彼女を見失ってしまった。戻ろうにも道なんてわからない。
「おおーい!おおーーい!!」
助けだ!私は今度こそ間違いなく声のする方へ向かっていった。
無事に救助され、Kの元へ行った。
「M子は?」
「…病院だよ」
「・・・」
「崖から落ちたらしい…」
声も無くうなだれる私たちを突然の電子音が驚かせた。

「メールだ」

そのメールにはこう書いてあった。

 い つ ま で 待 た せ る の よ 

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