[川原の石]

川原に張ったテントから這い出した。
テントの中は暑苦しく、寝苦しく、じっとしていられなかった。
四つん這いで進んでいると、月明かりが差した。

指が何かに引っかかった。
指先が、ぬるっとした何かを感じた。
掌が、膝が、石以外の何かを感じた。

川原にある大小さまざまの石が、人の顔をしていた。
右手の薬指が、誰かの目に入っていた。

無言で、青白い月明かりの下、数知れない顔が転がっていた。

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