[樹海の管理人]

兄から聞いた話

兄の友達がある時仲間と一緒に富士の樹海でキャンプをすることになった。
昼過ぎに樹海に着いて、キャンプに適した場所はないかと樹海の中をうろうろしていた。
歩いている最中に樹海の奥に蛍光色のパーカーを着たおっさんがいるのを目撃した。
兄の友達は「樹海の管理人か何かだ。」と思い、そのおっさんに見つからない様にその場を後にした。
最終的にキャンプにちょうど良い空間を見つけ、そこでテントを張ることになった。
夜になり、夕飯を食べ終わると皆でテントに入る。
色々な話をしていたが場所が場所だけに怪談話が始まり、大いに盛り上がった

だいぶ夜も更けてきた時だった。
テントの外から声が聞こえた。
「すいませーん。」
皆は一斉に凍りついた。
「すいませーん。」
また声がする。テントの出入り口からだ。誰かがそこにいる。
「すいませーん。」
誰も声を上げることが出来ない。
すると声はテントの周囲を回りだした。
「すいませーん。」「すいませーん。」「すいませーん。」…

仲間の中の一人がついに耐えられなくなって大声を上げた。
「んだゴラァァァァァァァアアアアこのヤロオオオオオオオォォォォオオォォ」
これにつられて皆が叫び始めた。
「帰れコラァァァァァアアアァアァァ」
「来るんじゃねえええぇぇぇ」
皆でわめいていると、外の声はぴたっと止まった。
そしてテントから去ってゆく足音が聞こえた。
「助かった。」と思いながらもその夜は結局、皆一睡も出来なかった。
朝を迎え、一安心しつつテントの出入り口を開けた。
すると皆真っ青になった。
テントの前に、蛍光色のパーカーが置いてあった。


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