[絵の具を借りる]

絵の具を借りたよ


私が小学3年生くらいだったときの話。

当時、私たちの間では、二人羽織で絵を描くことが流行っていた。
たぶん生活科という科目の中での授業で習ったんだと思う。

休み時間などに、2人1組になり、前の人と後ろで絵を描く人になって、できあがった絵を見てみんなで笑ったりしていた。私も前の人や後ろの描く人になったりしたことがある。
間違えて床に描いてしまったりもしたが、とても楽しかったのを覚えている。

ある日の休み時間、いつものように二人羽織で絵を描く遊びをしていた。
ジャンケンで2人を決めて(みんなやりたがっていたので勝った2人がさらにジャンケンして前後を決めた)2人が決まった。
そのとき、後ろになった子(Y君)は、滅多に私たちの仲間に入ってくることはなく、1人で本を読んでいることが多かった。たまたま気のりしたんだろうなぁ、と思いつつ、2人が準備しているのを見ていた。

いよいよ、描くぞ!と言うときだった。前の子が首をだらんとして、ぴくりとも動かなかった。
Y君も描き始める様子がない。
「まだぁ?」
「早く描いてよ〜」
とみんなで騒いでいた。

と、そのとき、2人の足下から赤いものが流れてくるのが見えた。
「血だ!!」
と誰かが大声で叫んだ。私を含めたみんなは何が何だかわからず呆然と赤いものが流れていくのを見ていた。

また、今度はY君がなにかを描き始めた。
指で赤く紙に描いていった。
「鉛筆が折れちゃったから背中から絵の具を借りたよ・・・」
とY君は意味不明なことを言ったとき、もう片方の手には刃の長いナイフみたいなものを握っていた・・・。

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