[害虫駆除]


あれは、俺が就職してから1年位経った頃だったかな。
仕事になれて、先輩とも気兼ねなく話せるようになって、丁度ペーペー脱出したって頃。
俺は世間一般で言う所の害虫駆除業者に勤めてたんだわ。
コレ言うと結構馬鹿にする奴多いけど、誇り持ってやれる仕事だったよ。
自分で言うのもなんだけど、生活環境を守る正義の味方みたいに感じてた。
駆除が終わった後にお礼言ってもらえると、物凄く達成感があったし。
まぁともかく、そんな俺が体験した話。
俺らの仕事の半分かそれ以上は、一般住宅じゃなくてレストランだとか事務所だとかの駆除だった。
そうすると日中は人が働いてるわけで、仕事時間は自然と夜から朝方になる事が多かったんだわ。
そんでもってその日は、俺一人で居酒屋のネズミ駆除にあたる日だった。
こういう仕事って普段は複数人でやるのが原則なんだけど、
その居酒屋の規模が小さい事もあってか、初めて俺一人に任せてもらえたんだ。
一年間頑張ってきてやっと俺も認められたか、って思って本当に嬉しかったなぁ。
2時くらいに現場入りして、その店の店長に鍵を受けとる。
仕事が終わった後に自分で鍵かけて帰る訳だな。
誰も居ない店内、外はあいにくの雨模様だった。
1人残ってネズミ捕り用の粘着シートをせっせと設置。
何処にでも置けばいいって物じゃあないから、
一応気を使いながら50枚くらい設置し終わった時だ。
妙な音が聞こえてるのに気付いた。
遠くから聞こえる水道の音、という感じ。

何となく腕時計を確認すると3時を廻った所だった。

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