[真っ赤な男]


ゲーム製作者飯島健夫氏の十八番の話。

少年時代、山にボーイスカウトかなんかで夏キャンプに行った時、
それを見たんだそうだ。

真っ昼間。
カンカン照りの中、何人かで歩いていると、
木立の中、少し暗がりになった所、ほんの5mほど先に、それはいた。

人間…?
木立の緑色のなかに、
全身を血で塗りたくったかのような、真っ赤な男。
どろっとした感じで、服を着ているかどうかもわからない。

目だけはぎょろりと白く剥いて、じっとこちらをみつめている。
横笛のような、何かわからない物を、両手で支えて口に付け……、
しばらく、にらみ合いが続いた。

と、いきなり、足も動かさず、す──っと横方向に滑るように、
赤い男は木立の中に消えた。

真っ昼間、明るい太陽の下の出来事でもあり、怖いというより、
なにか、現実感を感じられずにいたが、夜になって、寝床で男の姿を思い出して急にゾッとした。

近くに精神病患者の施設があったらしいが、そこの患者が脱走したり出歩いていたということはないという。
そもそも、人間らしいところが全く感じられなかった。

あれは、現代に生き残った妖怪のたぐいではなかったか。
飯島は今、そう思っているそうだ。

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